妖精の声
なかがわひろか

妖精の振りまく鱗粉が
鍵盤の上に優しく振り落ちる
それは聞いたこともない和音
はらはらと
ポロン、ポロンと

和音に合わせて妖精は歌う
声は和音をかするすれすれの高さで
美しくたどる

それは人間には奏でられない音
それは人間には聞こえない音

不協和をも妖かす
妖精のセッション
共音は果てる瞬間の全ての憎しみを忘れた
男と女の様に交じり合う

はらはら
ポロン、ポロン

聞こえない
最なる美の音
しかし耳の奥にそっと入り込む
妖精の証

妖精の音

(「妖精の声」)


自由詩 妖精の声 Copyright なかがわひろか 2007-03-24 16:31:18
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