空回りする午後
あおば

          2007/03/23

起死回生の4回転
唸りを立てて
水音を立てて
スクリューが猛烈に空回りして
釣り人達の
悔しそうな顔を
あざ笑う
今年生まれの
オボコと呼ばれる
ボラの子たちは
水面を楽しそうに跳ね回り
喫水線を持たない
身軽な身体をもてあまし
キラキラした反射を好み
風の吹かない深みに向かって
釣り船の船頭さんを唆し
ボチャンと飛び込む
酔狂な蛙たちも騙して
雷魚の餌食に仕立てあげ
薄暗がりに潜む危険
スッポンの異名を取った
南国育ちの緑亀を唆し
大きな身体をゆっくりと
ギャラリーに見せつけて
暢気な顔して泳ぎ出す
釣り船の客達は
唖然とした面持ちで
空回りする水音に
禁止地帯の恐怖を
忘れていた恐ろしさを
タブーに触れて
藪から棒にぶち当たる
危険性
蓋然性
経済性
安全性
政治生命を賭けて
船頭さんは
笑顔を振りまき
オボコ達の機嫌を取って
藪から棒に掴まって
起死回生の
一押しすると
舟は
するすると本流に戻り
川口の
船泊に向かい
順調な時刻に
碇を下ろすことができる
それでも
釣れない魚は
魚籠に入れて下ろすことが出来なくて
釣り客達は
あっけない幕切れに
不満を言う暇もない
藪から棒が出てきて
命からがら脱出できたと
恐ろしさをまざまざと
顔に印刷し
助かったと
信じている面々
素直な顔して
電車に乗った

ガタン、ゴー
路面電車は
有無を言わさず走り出し
隣町まで定刻にお客さんを乗せていくが
今日のお客はあわてふためき
落ち着きがありません
誤字脱字もあるので
そのまま
掲載してはいけません
没にしてください。




自由詩 空回りする午後 Copyright あおば 2007-03-23 23:37:32
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