海を
ふるる

      海原に月がひとつ満ちていた
     波は立ち上がっては落ちていく
    暖かい夜なので淋しい予感はない
   浜辺に置いてある椅子は日に焼けて
  幼い頃の君はそこに立って遠くの方を
 眺めて言っただろう雲があるよ波もある
 かもめも飛んでる船もある魚が光ってる
 君の肌は日に焼けて潮風があたっていて
  しょっぱい味がしてまるで海の生き物
   みたいだったよ君はまったくうごく
    物にしか興味がなくってその目は
     いつまでもきらきらと輝くんだ
      海は見ていたよ君と同じ様に

      夜疲れて眠ってしまった君に
     海は子守唄を優しく歌っていた
    ため息一つだけついて君は寝返り
   とても暑い夜だった今夜とは違って
  暑い夜なので悲しい予感はなくむしろ
 君の手や足を成長させるのにはいい温度
 額に浮かぶ汗を誰かが拭ってくれていた
 それから月日がたってここにはもう誰も
  暖かい夜なので魚もお腹が一杯だろう
   僕は君がよく動く指でさっと捕まえ
    すぐに捨てたものだったけれども
     昨日のことのように覚えている
      君が海と風を眺めていたこと


自由詩 海を Copyright ふるる 2007-03-23 15:19:19
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