土曜日のトンネルを抜けて
はじめ
退屈で憂鬱な土曜日のトンネルを抜けよう
土曜日のトンネルに入ると僕は高い天井の狭く透明な牢に入れられたような気分になり
重力に負けて空虚な思考回路となり何かをしている自分が自分ではないような気がする
その牢では時間が止まっている
時計の針がある場所から動かないのを想像してバテてしまう
千切れた想像は茹でる前の饂飩の束を引き千切ったように見える
それは睡眠や趣味で誤魔化さなければ永遠に続くトンネルだ
しかし切れ目のある正午過ぎの山頂の景色はいつも快晴で良い気分だ
午前中の登りのトンネルが一番キツいのだ
僕は無意識に心に汗をかいている
とても無気力な気分になる
これは僕の性格だからだろうか 僕だけの話なのだろうか
逆にトンネルを過ぎたずっと先の月曜日はみんな嫌っているようだが僕は好きだ
しかし火曜日のトンネルも嫌いだ
体の中に鉛を入れられたような体調になってとても嫌だ
話を元に戻そう そういうわけで土曜日の午前中は苦手だ
いよいよ下りの午後のトンネル 四時までのトンネルは心が空っぽにならない代わりに心が時間をストップさせようとスリップしている
四時の柱時計を見ると 僕はとても落ち着いた気持ちになる
それ以降のトンネルは(心は) 比較的穏やかだ
しかし十時過ぎのトンネルをくぐってしまうと 僕の心は羽が生えて 手が届かない所まで上がってしまったような気がする
やっとのことで心を捕まえると トンネルは安定し 僕は日曜日に出ることができる
まるで雲の上に乗っかったような心持ちだ
空からは土曜日以外の線路を見渡せる 果ての見えない長い道のり
僕は全てを見据えたような気持ちになって 気持ちの良いベッドに潜る