待っていた
ふるる

ゆっくりと雪は溶けていくのだから
膝を抱えて待っていればいいんだよ
君のこぼした涙は墨の味がしたんだ
あの黒い雨のような黒い枝のような
君は何か悲しかったんだろうか心が
だから涙を沢山沢山こぼしたんだね
僕はそれを残らず掬い取って舐めて
君に笑って欲しかったよあの笑顔で
さむいさむいと言って君は膝を寄せ
身体をかたくして縮こまっていたね
僕はすぐ隣にいたんだけど見えない


あれから随分時間がたったのだろう
君も君の影も涙ももうここにはない
雪もすっかり溶けて消えて春が来て
君はきっと春風の中で笑っているね
僕は知っている君の涙の黒い枝から
一斉に黄緑色が芽吹く音が鳴り響き
あの晴れやかな音を何ていうのかな
君だったら素敵な名前をつけて歌う
軽やかな唇軽やかな歌軽やかな手足
君はひらひらさせて踊りもするんだ
素晴しい僕はずっと待っていたんだ




自由詩 待っていた Copyright ふるる 2007-03-22 20:25:02
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