静けさの中の幸福
はじめ

 静けさの中に幸福を見つける
 幻聴も不安な要素も何もない世界
 命が永遠に感じられる
 眠りの崖がすぐそこまで来ている所
 僕は安心して墜落できる
 車の走り去る音も二階を包む異様な空気の流れも通気口の音も隣人の話し声も外の風の唄もみんな心の中に穏やかな感触を残していく
 世界は透明な世界に変わっていったようだ
 自意識過剰気味の僕を決して責めず 世界はゆっくりと僕を受け入れていく
 僕は白い光に包まれて世界と同化する
 無意識の海に沈み 漂いながら 僕は神秘的な魚介類を目にする
 僕はにっこりと笑いながら世界の端まで向かっていく
 海上には 宇宙が尖った星を突き出しながら 僕のことを暖かく見守っている
 世界の端から落下した僕は 宇宙の底にゆっくりと倒れる
 そこには何もない ひんやりとした地面が僕の体温を奪っていくだけだ
 でも君がいる 数億年前の無意識の海水は僕を濡らして目を覚まさせ 下に水溜まりを作った
 無数にある水溜まり その中心に君は立っている
 やがてそれらはくっついて一つになった 所々に星の死骸や肉片が沈み輝いている
 僕と君は出会った しんとした静けさの中に幸福を見つける
 僕は君を抱き締める 宇宙は丸くなり僕達を包んだ
 海水が満杯になるのも時間の問題だ 誰かが宇宙に穴を開けなければ僕達は生きていけない
 僕達は胸まで海水に浸かりながらその行方を見守っていた たとえ死のうとも離れることはないことは分かっていた
 僕はふっと目を覚ました 静けさは元に戻り 幻聴が聞こえそうな気がした


自由詩 静けさの中の幸福 Copyright はじめ 2007-03-22 05:44:07
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