空のかばん
ぽえむ君

終点の駅に着いたので
降りようとしたら
網棚にかばんが置いてある
すでに乗客は誰もいない
きっと忘れ物なのだろう
駅員さんに届けてあげよう
かばんはとても軽かった
何も入っていないのかもしれない
空のかばんであれば
届けるだけ手間なので元に戻すか
持ち主には申し訳ないが
かばんを開けることにした
ジッパーを下ろすと
かばんの中から天井に向かって
大きな虹が広がった
からのかばんはそらのかばんだった
中を覗くと虹以外
何も入っていない
口を閉め直してそっと網棚に戻し
平静を保った表情で駅を降りた
かばんを乗せた列車はそのまま
地下にある車庫へと進んでいった
見上げた空は
ようやく青空が見え始めていた


自由詩 空のかばん Copyright ぽえむ君 2007-03-21 11:26:42
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