一日も終わり
tibet


ここの夕日はきれいだなってよく思う。
けれども東京の夕日だってきっときれいだったんだろうなとも思う。
高いビルやたくさんの電線のせいにして空をあまり見なかったのかなと思う。

人里離れて人恋しくなり、タヌキやキツネに化かされる。

「あの夕日はさ、どっかの朝日なんだ。」と隣の人が言った。
私は「あの夕日と私たちの間にいる猫は黒猫に見えるけど実は違うかも知れないんだ。」と言った。
「影ですか。」
「そうかも知れないってこと。・・・そう言うあなたはタヌキでしょ。」
「ははは、ばれましたか。でもキツネなんですよ。コンコンコン。」


「コンクリートと芝生の割合は半々といったところです。」
「そうですか。じゃあここに決めたいと思います。」
「では、こことここにサインをしてください。」
「はい。書きました。」
「これで手続き完了です。これであなたも正式に我が村の一員です。おめでとう。」
「ありがとうございます。でも実は私、猫なんですよ。」
「ああ、そうでしたか。でも、構いませんよ。猫の方も大勢いらっしゃいますから。この村は。」
「それはよかった。で、この川から向こうの小川までが私の土地ですね。」
「はい。その通りです。」
「穴を掘って、山を作ってもいいんですよね?」
「はい。もちろん。あなたの土地では何をされても構いませんよ。」
「魚を捕って眺めたり、食べたりしてもいいんですね?」
「それは船橋の東にある漁師のお頭に聞いてください。」
「わかりました。そうします。でも、その前になにか食べたいな。お腹が空いて目が回りそうなので。」
「おやまあ、それは大変だ。そうですね、あそこのキジやカモなんかいかがでしょう?私も捕るのを手伝いますよ。撃ちましょうか、それとも網の方ですか?」
「網でお願いします。今は丁度ヒナを育てているのが多いでしょうから。」



「昼からビール?」
「はい。あなたは夜からですか?」
「そうなんです。昼からだと夜には酔っぱらってしまうので。」
「そうしたら眠ればいいじゃないですか。」
「いえまあ、そうなんですけど、そうも言ってられないじゃないですか。」
「そういうもんですかね。」
「そういうものなんですよ。」



日がだいぶ長くなってきました。
しかし、夜はもうすぐです。
水の多い土地なので夢の中まで川のせせらぎが聞こえてきます。


自由詩 一日も終わり Copyright tibet 2007-03-21 10:15:42
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