日溜まりの中で
はじめ
三月上旬の日溜まりの中は
時間の経過を感じさせない
桜の花はまだ咲いていない
僕は記憶喪失で
この日溜まりと十二月上旬の日溜まりの違いを見出せない
君は何処に行ったんだろうか
君だけを忘れていない
頭の中は君のことで一杯で ぐるぐると回っている
君の顔も思い出せないのに
君のシルエットだけを追いかけている
桜舞う木の下で 僕は君を追いかけている
僕は自然に涙が零れてくる
日溜まりの中に涙が落ちて 静かに波紋を広げた
延々と続く絶望しかない
この日溜まりに急に疎外感を感じるようになった
部屋には夕日が射し込み 段々と暗くなっていった
僕の心のように六畳の部屋は冷たくなっていった
暗闇の中で 僕の目は光っていた
君がこの部屋にいるみたいに感じ 君を抱き締める真似をした
僕は生暖かい空気を抱いていた
しかしそれも部屋の空気と同化し ゆっくりと消えてなくなってしまうと 僕の目は乾いて部屋の中で浮いているような感じがした
僕は瞳の奥にある宇宙を見つめていた 心を落ち着かせると 僕は布団を出して眠る準備をした
しばらく何も考えなかった ただ明日も日溜まりの中にいれたらいいなと思っただけだった