角のない消しゴム
ぽえむ君

角のない消しゴムは
捨てられる寸前だった
角があろうとなかろうと
同じ材質なのに
四つの角があるとないだけで
大きな差をつくっていた
丸みの部分にはすれたえんぴつが
くっついていて
手で握るところは変色して
黄色くなっている
それでも消しゴムは生きている
むしろ消しゴムはそう生きるのだ
何も使われていないものが
経験の多いものよりも
選ばれてしまう
角がなくなったのは
それだけ役に立ってきたのだ
身をすり減らして
汚れきったものよりも
まだ何も削られていない
無垢の方が都合がいいらしい
角のない消しゴムは
すっかり肩を落として
筆箱の中で
自分では自分を消せないことを
ひどく恨んだ


自由詩 角のない消しゴム Copyright ぽえむ君 2007-03-19 22:21:53
notebook Home 戻る