しらやまさんのこと 8
AB(なかほど)

 もう一緒にグラウンドを駆け回ることができない友達について、S君は作文を書いた。その作文を読みながら泣いた。その声を聞きながら、僕も泣いた。
 とてもかなわない し、かける言葉もない。

 春は、一度やって来て、またちょっと引き返したようで、僕らの町にも雪がちらついていた。日本海の冬型の雲はすじ状で、雪の降っている向こうには青い空が広がり、山がまばゆく輝く。日々の生活でほんの少し立ち止まって普段とは違う方向を眺めるだけで、言葉以上の世界が広がっているときがある。少なくとも僕が持ち合わせている言葉よりは。
 
 僕らは優しくなれる。
 罪多き生き物で、偽善を覚えて、利己主義であっても 優しくなれる。

 もう会えない君へ、
 こんなにも寂しい思いをするのなら、口だけじゃん と言われながらも、優しい言葉をかければ良かったと思う。

 もう会えない君へ、
 夏のグラウンドは暑かったね。
 冬の体育館は冷えたね。
 初めてのゴールはうれしかったね。

 もう会えない君へ、
 山 白く 輝いて 
 まぶしいよ。










未詩・独白 しらやまさんのこと 8 Copyright AB(なかほど) 2007-03-19 20:39:11
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