雨の日の渡り廊下
塔野夏子

いちばん古い棟へとつづく渡り廊下は
いつもひっそりとしている
ことに雨の日には
この渡り廊下だけが離れて
雨降る宙の中に 浮かんでいるような気になる
  《ここで語り合ったこと
  《ここで告げたこと
じっと佇んで
窓ガラスをつたうしずくたちをながめていると
  《ここで秘めたこと
雨降る記憶の中に 漂っているような気になる

やがて本棟の方から くぐもったチャイムの音
フリージアの香りが かすかにした





自由詩 雨の日の渡り廊下 Copyright 塔野夏子 2007-03-19 18:32:46
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春のオブジェ