花々
水在らあらあ






おまえの乳房の形をたどって
月が闇に向かって死んでゆくぜ
ほら
見上げなよ
あんなにも
雲と星屑に讃えられて

死んで
このふしだらな世界からいなくなっちまうなら
今がいい
いつだっておまえは
純銀のスプーンから垂らした
蜜のしずくのように歪んで 切れちまうくらい
純粋で 

花々で出来上がるしか仕方がなかった運命に
花々で出来上がるしか仕方がなかったおまえの運命に
死んじまえばいい
死んじまえばいい

りんごと アカシアと 薔薇と たんぽぽから 
蜜蜂は愛を集めて
おれはそんな蜜蜂のようにしか生きられないおまえを
見ていられない 見ていられないんだ
おまえの心はあんまり天国に近くて
この地上では弾かれるばっかりだから
死んじまえばいい
俺は泥にまみれて 生きて
涙で 毎日水をやるから
そうしたら
花々で出来上がるしか仕方がなかったおまえの上に
新しい花が咲くから

その蜜を蜜蜂が集めて
それは人々の朝食に添えられて
この世界は少しだけ 
透き通って

だから
生きたらいい
生きなよ
一緒に
生きてゆこう
ゆっくり時間をかけて
世界を
透かしてゆけばいい
どうあったっておまえのせいじゃないから
どうあったっておまえは生きたらいい
草花を撫でて
日を浴びて踊って
そんなことしかできなくても
世界はおまえが踊るたびに一つ美しさを増すから


おまえのお腹の薄っぺらい曲線をたどって
月が闇に向かって死んでゆくぜ
ほら
見上げなよ
あんなにもほほえみながら
血をさわがせて
海を荒らして
復活の予感に
震えて











自由詩 花々 Copyright 水在らあらあ 2007-03-19 11:51:48
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