愛について
んなこたーない

生牡蠣色した夜明けの都市を
雨は重たい鉛のように撃ちつける
聖母像を運ぶ男と
地球儀を回しつづける女が
顔を上げて同時につぶやく
――あなたは誰?

ぼくは鉄路に耳を当てている
いくつもの表情と抱擁があったが
結末は常にひとつしかなかった
目を閉じると
巨大な鋼鉄の歯車が
回転しながら迫ってくる
やがてぼくの頭上の空に
多数決の朝が訪れるだろう

男よ 攪拌器が卵白を泡立てる
そのようにして愛は立ち止まるだろう
女よ 誰でもないその唇にぬれて
地図は太平洋を完成させるだろう


自由詩 愛について Copyright んなこたーない 2007-03-19 00:08:18
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