オニオンスープ
Six

僕の大好きな貴女は
「もう泣くのは嫌なの金輪際」
という気の強そうな発言を
電話の向こうで言う
でも
目にごみが入ったら涙が出るだろうよ
悲しい映画を見ると泣き出すのはいつものことだし
貴女の包丁は切れ味が悪くて玉葱を刻むたびに涙を流しているくせにさ
「じゃあ、砥石を買う」
それはいい考えだ
僕と電話の出来ない夜には
包丁を研いだりするのもいい気晴らしになるよ
切れ味の良い包丁で玉葱をサクサクと刻み
温かいオニオンスープがぐつぐつと煮える
それは貴女の涙と同じくらい温かくて少々の塩気がきいていて
それを食べながら貴女はもしかすると
また涙のストックを体内に抱えるのだろうか
おやすみ貴女
涙もろい貴女の目と心の間には
どんな広く深い海があるのだろう


未詩・独白 オニオンスープ Copyright Six 2007-03-18 19:11:14
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