「 窓辺の日射し 」 
服部 剛

ひとりの部屋で 
哀しい唄を聞きながら 
歌詞を机にひろげて読んでいると 
窓からゆっくり日は射して 
机を覆う影は 
波のようにひいてゆく 


  * 


窓の外を見ると 
鞄を背負い
立ち止まる旅人  
川のほとりに重荷を降ろし 
膝を抱え 
くさむらたわむれれる 
二羽の蝶々を眺めている 

川面かわもは 
春風に散る 
桜吹雪 

ふたたび 
鞄を背負い 
立ち上がる旅人 
淡い夢を失えぬまま 
名も無い季節へと 
歩き出す 


  * 


ひとりの部屋に 
流れていた哀しい唄が終わると
時計の秒針の音は響き
長い間 
引き出しの奥にしまっていた 
色褪せた表紙の日記を 
机の上に置く 

( 探していた愛が 
( 闇へと姿を消したあの日 

( 絞り落とした涙で 
( 滲んだいくつかの文字 

机の上に置いた 
色褪せた日記はひらいたまま 

哀しみにそそがれる 
窓辺の日射し 

あの日の涙が乾いたページに 
ひかり 
ふくらんでゆく 








自由詩 「 窓辺の日射し 」  Copyright 服部 剛 2007-03-18 16:59:18
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