ひとつ ゆれる
木立 悟




木々のはざまに見える鉄から
遠のくことのない冬の星から
ひとりはひとりを指さしながら
凍るように降りてくる


潮騒に似た
生きものの音があり
坂の途中にかがやき
のぼることのないかたちをしている


水がたわみ
土の下を動き
たたずむものの足をわずかに持ち上げ
ゆうるりと坂を下りてゆく


滴を背負う羽があり
はばたきを耐えて歩いている
波の音が砂を揺らし
滴のなかの雪を揺らす


行き着く先は常になく
崖の手前で引き返す
無数の道は無の道に近く
横切る音にさらされている


海を越えようとする羽が
滴を手のひらにあずけては去る
ふせてはあふれる片目の前で
野は吹雪と戯れている

















自由詩 ひとつ ゆれる Copyright 木立 悟 2007-03-18 16:31:04
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