生きていく、ということ
松本 卓也
何の為にと言う疑問さえ飲み込んで
ただ生き延びる事だけを目的に
たまに吐きたくなる愚痴も飲み込んで
安酒で心を誤魔化す日々が続いてく
何をやってるんだろうなんて
そんな疑問を抱く事で慰めていく
いつの間にか少年の頃思い浮かべた
未来とは違う自分の姿にさえ言い訳を作ってた
目の前の仕事を不器用にこなして
毎月末のお給料をご褒美に
少し贅沢な食事をしたとしても
月曜のたびに憂鬱を抱えている
この指から生み出されたものは
何処で誰に繋がっているのかな
もしも僕の見えていない場所で
誰かの暮らしの糧になっていれば
生き甲斐って何なのだろう
何を救いに生きていくのだろう
誰の笑顔を思い描けるのだろう
不相応な望みなのかもしれないけれど
好きに生きているつもりだけど
気が付けばいつも胸に穴が開いている
誰も見ていないところで流した涙も
朝日を浴びる頃には忘れたふりをして
いつもありがとう
笑顔をくれる人も居れば
早く何とかしてよって
注文を投げかける人も居る
組み上げてきたものもあり
作れなかったものもあり
労いや感謝の言葉もあれば
苦情や文句だって受け止めて
見た事もない人を泣かせた事も
出遭う事の無い人を笑わせた事も
きっとあったんだろうな
これからも繰り返すんだろうな
全てが目の前の作業だけで
完結していたのだとしたら
何と色褪せた生き方だったのだろう
僕の為が知らない内に誰かの為に
通勤路ですれ違う人の笑顔は
この社会の螺旋で巡り巡った
生き様の証かもしれないなんて
そんな事を思う朝もあるんだから
たとえ望んだものではなくて
ただ生きる為に過ごしてきた
今の単調な生き様だって
悪くは無いと思える日が
いつかきっとやって来る
投げ出してしまわなければって
そんな確信を胸に抱いて
今日を過ごすんだろうな