太陽の微笑み
五十川由依

太陽は旅人に微笑んだ
旅人は異国の地の砂を一掬い
病院で眠っている少女の枕もとに置いた

サラリーマンは缶コーヒーを片手に地面を見る
いつの時代だって影は黒い
グループから追われた女子高生は
空を見ることができない

スケッチブックと絵の具しか持たない画家は
光のあたりかたをよく知っている
カンボジアの青年は
ひたすら上を向いている

太陽は微笑んだ
売上げしか気にしていない社員には
どうしても影が濃くなるだけにしか思えない

病院で眠っていた少女が目覚めた時
少女は枕もとの砂を握った
始まりと不安の香りがした

太陽はいつだって微笑んでいる


自由詩 太陽の微笑み Copyright 五十川由依 2007-03-17 22:40:09
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