まひるのつき
夕凪ここあ

たとえば
水銀の
体温計の
危うさだよ
それは

けだるさの
端っこで
かすかに
午後の授業

先生
砂時計が
ぜんぶ
落ちたら
眠ります

少し
似ている
前髪に
まっすぐ入れた
鋏の
乾いた音
昨日の夜の
小さな
不安

天井の
かすかな染みの
数を知ってる
天体観測なら
どんなにか
いいのに

私の
知らない
ところで

まひるのつき

昼休みには
保健室に
男子生徒
の声

カーテンの
しきり
折り目正しい
シーツと
よれた
スカートの
静かな
矛盾

昼休みの
終わり
夢うつつに
こくはくの
れんしゅう

満たされる
チョークの
知らない
匂いと
見慣れた
消毒液に
ひたされた
午後

先生
今日は
もう
帰ります

どうか
しばらく
カーテンを
開けないで
きっと
見覚えない
染み
ひとつ

明日には
きっと
そんなことすら
なにひとつ
消毒されて
また
沈黙してく

もう
ちょうどいい
枕の高さの
かなしみ


自由詩 まひるのつき Copyright 夕凪ここあ 2007-03-17 04:00:57
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