正しくないぼくたちのために
佐野みお

よく話し合って進んできたはずなのに
ぼくたちは何かを大きく間違えて
今考えているものはきっと世界を
ひどく害するような概念のあり方なのだ
嘘つきが一つの嘘をついたばかりに
百の嘘が必要になるのと同じ方法論の
愛の思想を気づかずに抱いていたのだ

ぼくたちはもう限界みたいだ
何か言わなければならないとき
口をついて出てくる言葉の矛盾を
自ら意識せざるをえないのだ

誠実な愛の思想であろうとしていたのだ
愛の真実をつかもうとしていたのだ
美しい関係を形成しようとしていたのだ
少なくともそのつもりであったのだ

何が足りなかったのだろうか
こんなことならいっそのこと
ほどほどの愛みたいなものを
模倣して満足していればよかったのだろうか

ぼくたちは引き返すことはできない
初めからやり直してみるほど若くもない
ぼくたちの思想は世界を害する
ぼくたちの愛は世界の厄介ものだ
ぼくたちの存在が間違いだ

あの日正しく考えたかった


自由詩 正しくないぼくたちのために Copyright 佐野みお 2007-03-16 21:36:55
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