白すぎる天井、不鮮明な感情
三架月 眞名子
窓を覗き込んでも
見えるのは隣の建物と
排気ガスで汚れた空だけ
部屋の中は小さくカーテンで区切られ
自分の居場所はベッドの上だけ
酸素が足りない・・・
息苦しくてしょうがない
生き苦しくてしょうがない
こんなところに入っていたら
もっと悪化してしまうんじゃないだろうかという不安
でも
外の世界に放置されるのはもっと不安
秤が傾いたのは
この真っ白い檻だった
花は置かないことにした
だって花が可愛そう
もっと開放的な場所に咲きたいだろう
それが本来のあるべき姿だ
窓は開けないことにした
だって外の空気はよどんでる
もっとも中の空気がいいわけはないけど
混ぜるともっと最悪になる気がした
人とは喋らないことにした
だって皆同じ病人なんだから
もっと暗くなってしまうだろう
話す内容は予想がついてる
そう思ってこの檻に入居した
孤独な生活が始まるんだ
でもそれが自分に一番にあってる
そんなひねくれた考えを持っていた
結局は最良の選択なんて存在しない
結局はアタシの居場所なんてどこにもない
ただあの家にはいたくない
この状況もただの間に合わせ
それじゃあ何も変わらない
良くなるはずもない
そんなの薄々感づいてた
どうしようもなかった
とにかく孤独を欲していた
でも
彼は毎日逢いにきた
最初は嬉しかった
こんなアタシでも大事にされているんだと
少しの希望が持てたから
でも
目的がアタシではないことに気づいてしまった
アタシと逢うことで出来る付加価値に
彼は惹かれてやってくる
彼の目はアタシの表面しか見ていない
欲しくない種類の孤独がアタシに襲い掛かる
ただ
彼女は一度も来なかった
捨てられたのだろうかと一瞬思ったけど
そんな無慈悲な人ではないことくらいわかっていた
危なげなくらい優しい人だから
ただ
お互い少しの時間が必要だったんだ
顔を合わせない時間が二人の溝を埋めることを
本能で理解していた
やっぱり血の繋がりが一番濃いのだろう
そして
ただただ惰性的に
契約期間の三ヶ月は過ぎさった
結局本質はなにも変わらなかった
変わったのは
薬の量と種類
そして
普通に見せかけるための演技法
アタシはよけいにねじくれてしまった
何のせい?
誰のせい?
きっと全てのせいで
同時に全てのせいじゃない
いつか治るのだろうか?
いつか変われるのだろうか?
きっといつかなんて曖昧だ
いつかではなく、いかにが重要だ
答えは分かっているみたいだけれど
解き方は分からない
そして
時は過ぎる
アタシはひとつずつ歳を取る
そして
時は止まってもいる
アタシはきっと大人になれない