借金取り
ぽえむ君

隣の家に借金取りがやってきた
すごい剣幕で怒鳴っていた
家と家がくっついているくらい近いので
まるで自分の家に聞こえるかのようだった
小さい音ながら
何度も何度も隣の家のインターホンが
鳴らされているのもわかった
家のものはいるのかどうかわからないが
もう何百回も鳴らされている
忍耐合戦の長期戦を呈してきている
借金取りはその家だけではなく
我が家も含めて
近所全体に聞こえるかのように
大声を張り上げていた
カーテン越しからそっと借金取りの顔を見ると
至って普通の人の顔だった
どうやったらあんな言葉を
矢継ぎ早にしかも慣れた口調で
簡単に他人に言えるのか不思議だった
声がぴたりと止んだ
どうやら今日のところはこの辺で勘弁なのだろう
住宅街に平和が戻った
一段落したことなので買い物に出かけた

立ち寄ったスーパーに入ると
先程の借金取りが小さな娘と手をつないで
買い物をしていた
みすぼらしい服を着た女の子は
棚にあるお菓子を手に取ると
不安そうに借金取りの顔色をうかがった
借金取りは何も言わず黙って買い物かごの中に
お菓子を入れてあげた
借金取りにとって
優しい言葉は苦手なようだ


自由詩 借金取り Copyright ぽえむ君 2007-03-16 13:51:03
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