停春
ねなぎ

外は柔らかくなっていくと言うのに
僕は動けずに固まっていく

東風に梅が飛ぶ気がして
顔を上げるが
青さに顰める

霞むような惑いの底で
乾く様に張り付いて
青くなり行く季節に
忘れたのだろうか

不安定な癒合が
じわりじわりと
音を立てるように
確定して動かずに
曲がって
ごつりと
噛み合わす

気が付けば節目も無く
気温しか気にしなかった

紅い匂いが
散りながら
締め付けられては
繰り返す
凝集されては濁り淀み
色を失くして
蛋白質が黒くなる

冷たい風に散るまでもなく
散らかったリン酸カルシウムが
凝り固まって軋む

四音がゆっくり
眠らせて
思案の青さが酸いように
身に染みて溶けもせず濁る

青くなりいく
季節の底で
捻れて曲がって
繋れて
異様に密度が増していく

春の底で
沈殿した塊が
ゆっくりと凝固していく

未だ寒く底冷えて
けれども息吹は
盛られて歪に硬くなる

圧されれば
痛み
熱を持ち
揚力を見上げては
打ち付けられて
襟を掻き併せ
身を締め
底で固まる

僕は柔らかくも慣れずに固まった身を抱えて
動けずに梅の痛みに咽ている


自由詩 停春 Copyright ねなぎ 2007-03-16 11:43:50
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