線香花火
なかがわひろか

湿った線香花火
火はすぐ消える
そんなのないや
勝手に夏を終わらせた

思い出橋の上で
歌を唄って
お上手ね
彼女は確かにそう言ったのに

ぽとりと落ちた火の玉に
少し地面が火傷する
ほんの小さな大地の痛み
それはささやかな夏の証

凍りついた橋の上で
彼女は一人スケートを楽しむ
そこには花火の跡があったのに
彼女は気づかぬ振りで滑る

上手だね
皮肉を込めて僕は言う
勝手に去って行った夏と
それでもきれいな雪と君に
少しの嫉妬を込めながら

湿った線香花火
降り積もった雪の上
冬にも主張するように
雪の中をすり抜ける

ジュジュジュ
ジュジュジュ

(「線香花火」)


自由詩 線香花火 Copyright なかがわひろか 2007-03-16 00:20:52
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