「 月夜の照明 」 
服部 剛

子供の頃  
両親のあたたかなまなざしに 
まもられて 
幸せはいつも 
「 そこにあるもの 」 
だった 

やがて大人になり 
自らの手を伸ばし 
つかもうとした 
幸せはいつも 
「 手から流れる透明な砂 」 
になっていた 

もう 
寂しく震える腕を 
差し伸べることはしまい 

生ぬるい 愛 を求めては
無様ぶざまつまずく  
わたしの胸のすき間から 
弱々しくたち昇る 
( 煙の人影 ) 
この手に握りつぶし 
わたしは 
ゆっくり立ち上がる  

いつのまにか 
色褪せていた日々を 
もっと走らねば 

背後からも 
忍び寄る  
( 煙の人影 ) 
振り切って 

夜のとばりに消えかかる 
闇のゴールを駆け抜けた時 
月の光のまなざしは 
地に倒れ 
白い息を漏らす 
わたしのまわりを 
夜空から そっと 照らすだろう 








自由詩 「 月夜の照明 」  Copyright 服部 剛 2007-03-15 20:41:37
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