colors
水町綜助
君を思う
とき
上と
下に
僕は
引かれて
風も冷たく高く高く上り
落下を予感する
ケラの様に深く僕を隠し
浮揚のしかたを知る
地平からすれば同じこと
君からすれば
白くちらされた道路のさなか
君を思う
とき
*
君を思う
とき
右と
左に
僕は
引かれて
倒されたバケツ
水浸しの廊下へ
嘘くさいほど青
色濡れた窓際へ
水色にしてみれば同じこと
君にしてみれば
暗灰色のビル打って
君を思う
とき
*
君を思う
とき
東に
西に
僕は引かれる
太陽を投擲し光を突き刺すか
太陽を捕らえ光に貫かれるか
恒星にしてみればいずれにしても黎明
君にしてみれば
失われた満ち潮の海岸
君を思う
とき
*
君を思う
とき
北と
南に
僕は引かれる
あついからだ寒くて
熱い炭酸水と
さむいからだ暑くて
冷たい太陽と
裸身にしてみれば同じこと
君をはだかにしてみれば
三月十二日未明
君を思う
とき
*
君を思う
とき
数え切れない色と色がぶちまけられ
独立して広がってそして
境界をなくして
入り乱れている
君は裂けている
君を思う
とき
僕は真中からふたつに割けそうになる
君を思う
僕は
もう
君にやわらかく
やわらかくなった僕は
割けることなく
うごかず
君の
前に
いる
君に
いる