君という名の愛
はじめ

 記憶と夢の中でしか君に会えない
 潮風に髪の毛をはためかせ 海の声に耳を傾ける君
 何と君に囁きかけているの?
 君の命がもう無いことを神様はどう思っているのかな?
 ただの運命だとしかお考えになっていないのかな?
 運命は神様でも変えられないことぐらい知っているよ? 聖書に載ってたもん
 だって神様として生まれたのも運命と言ってるもん
 それでも夏の日差し眩しい中 君はひたすら耳を澄ましている
 「神様に聞いてみないと分からないってー」とワンピース姿の君は少しだけ微笑んで振り返った その顔には大量の涙が溢れている
 「もう時間ないじゃん、私…だから、それまでに一生懸命生きようと思うの。二回目の人生じゃん。一回目も私死んじゃったよね。私達人間は、十九歳を越えると、天国で結ばれていた男女が、現世で再び出逢える為に、『心の声』が聞こえるようになるじゃない。私達は、『心の声』で出逢えた。本当なら私達二人のように結ばれるのが普通なんだけど、私の寿命があと少ししか無いから、『心の声』、消えちゃうね。どんなところにいても消えない『心の声』。私が死んだら、同じように心の相手を亡くした子と一緒になってね。文句も本音も考えていることも本当は『心の声』で通じるのに、全て口で言わなきゃいけないけど、それが最も人間らしい生き方だと思うの。全て完璧に理想が揃った相手を失うのは辛いけど、それともあなたは私のこと、永遠に愛してくれるの?」
 大粒の涙を流して尋ねてくる君を見て僕も泣き出した。
 「愛するに決まっているじゃないか、永遠に」
 君は僕に抱きつき耳許で大泣きした 天と地がひっくり返るぐらい激しく泣いた
 夕日が海の彼方にゆっくり沈んでいく
 夕日で伸びた影が口元を合わせた
 天国や神様なんてこの世にいない
 いるのは君という名の愛


自由詩 君という名の愛 Copyright はじめ 2007-03-15 04:29:01
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