春の告白
あおば

              2007/03/15


投函したと電話したら
明日、読むのが楽しみです
ホワイトデーのチョコレートも
美味しかったです

言われたので
少しは脈があるのかなと
明日への望みがつながるかと
チョコレートのカタログを読み直す
いつまでも同じことをしていては
すぐに飽きられるから
チョコレート以外の贈り物を考えなくてはと思うものの
何がよいか分からないので
とりあえずデパートの地下に降りて
食品売り場を一周してみたら
パインアップルのジュースの詰め合わせ

大きな苺のバックが1個580円で売られてる
上の棚には桐の箱に入ったマスクメロンが
2万円の札を誇らしげに下げて
お呼びでないと紫の衣を纏う
夕張メロンの安いのはないかと探したが
このブースには見かけない
落ち目になりたくないと痛感したが
プリンスメロンでは失礼かなと
隣の棚を見渡すと
苺がずらり勢揃い
1パック1000円を誇らしげに見せつける
先刻の580円がみすぼらしくなるほどで
お金の威力に頭が下がる
1000円の苺を2パック買って
日の当たる坂道をゆっくりと登っていったが
目当ての家は見つからない
住居表示のない街なので
誰かに道を聞かないと
どうしようもない
辺りを見回したところが
誰もいない
見知らぬよそ者を警戒して
外には顔を出さないようだ
GPSの車は迷わないで通り過ぎる
ケータイを持っていないから
問い合わせる手段もない
せめてタクシーでも通らないかと
見渡すが
この辺りは
よそ者は来ないのか
マイカーばかりが
悠々と走っている
自転車も来ない
途方に暮れて
元来た道をとぼとぼと戻る
駅に着けばなんとかなるかと
諦めないで歩く
向かい風が冷たくて
春の光が嘘のように思えるほど身体が冷える
孤独というものを
たっぷりと味わっているところに
見覚えのある顔が車の窓に映っている
迎えに探しに来てくれたのだと
喜んで大声を出したら
よく似ているけれど
赤の他人で怪訝な顔に強い警戒感が出ている
ケータイを持っているようだから
110番に連絡されそうな気がして
慌てて横町に逃げたら
駅へ行く道が分からなくなり
これからどうすればよいのか
分からなくなり
死にたくなった。




自由詩 春の告白 Copyright あおば 2007-03-15 00:08:16
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