午前三時の優曇華
はじめ

 空から優曇華の雪花がぽつらぽつらと舞い降りてくる
 三千年に一度の奇跡がこの世界を埋め尽くす
 それは君が無事に成仏できた証拠だろう
 君は仏になったの? それともまだ生死流転しているのだろうか?
 人々はこの神話のような現象を人目見ようと午前三時に外に出たり建物の上に乗っかって跪いて祈りを捧げている
 君はこの丘の荘厳な大神殿の王女だった
 僅か二一歳の若さで短い天寿を全うした
 美貌と才徳に優れ 先代の王から続いていた飢饉を救い仏教の普及拡大に力を注いだ
 病気を患ってからも偉大なる仏陀様の教えを忘れなかった
人々は安らぎの香りを放つ雪花を両手で受け止めた 
 すると突然輝きだしてその人達の願い事を叶えた
 幾度も幾度も父なる空からひらひらと無数に落ちてくる
 人々は些細な願い事の分だけ願い事を叶えた そして王女に感涙にむせんだ
 世界中の貧困に喘ぐ国々で同様のことが起きた
 言葉や意味が分からなくても王女の教えが心に染み渡り 涙を流しこの国に向かって両手を合わせた
 難民達が突如受け入れられたり 争いをしていた国同士が忽焉と平和同盟を結んだりしたのだ
 それは人々の願う気持ちが一つとなって届いたからであろう
 地球上の人間皆が昇り来る母なる太陽を見つめ 目を閉じて心を一つにした
 久遠の平和を忘れないように 
森羅万象への愛を忘れないように
 僕は君がこの世に生まれ変わるように願ったがそれは叶えられなかった
 世界中の木々に優曇華の花が咲き誇った
 僕は両手を広げ君と一つになった


自由詩 午前三時の優曇華 Copyright はじめ 2007-03-14 04:16:25
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