悲しみの向こう側
アマル・シャタカ

人は何も持たずにこの世に出でて
何かに押しつぶされそうに
喘ぎながら生きている
何のためにと問いかけることは
おそらくは禁句であって
しかも新たな分身を作る
己の問いの答えもないまま

涙を宝石に変えられたのなら
これほど悲しみに満ちた世界だ
貧困はなくなったかもしれない
しかしそれは悲しみのあまり
流された涙でこの星の水位を上げただけ
悲しみもなくならず貧困も消えはしなかった

お互いの無知から
戦争が起きそして人は恋にも落ちる
愚か者という言葉で一括りにするには
あまりにも違いすぎる事象なれど
こんなはずではなかったと
屍を前にして膝を屈し
愛する人に別れを告げる
根底に流れるものの哀れさよ

眠りを欲するならば生まれねばよかった
温もりを欲するのなら愛さねばよかった
眠れば目覚めに怯え永遠に眠る勇気もない
孤独ゆえに愛すれば去る悲しみに襲われて

打ち砕かれて一人
丸くなり涙する
無力でも明日は来る
愛する人に去られても愛さずにはいられない
ままならぬ人の世で私はあなたを捜している


自由詩 悲しみの向こう側 Copyright アマル・シャタカ 2007-03-13 23:55:43
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