京都市動物園
すなめり

ブリキのおもちゃのような観覧車には
昭和の絵本の動物たち。
ぼくたちは運よくパンダの箱に乗ることができた。

小学生の頃亡くなったきみのお母さんが下にいて
きみの左手はぼくの手を握り
ぼくの見えない右の手でお母さんに手を振っていたと
小さなカフェで きみは語ってくれた。

その店の特製のアップルタルトはふたりに一個の決まり。
それをフォークでぱりぱりとふたつに割りながら
きみは得意な顔していった、

「お母さん、あのサルの顔すごかったなあっていったんで、
わたし、あれがマンドリルなんやって教えてやった」

その日 ぼくたちの見たマンドリルの顔は
虹色に輝いていた。


自由詩 京都市動物園 Copyright すなめり 2007-03-13 19:45:32
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