カーニバル
はじめ
森の中では詩人達が集まって祭をやっている
皆豪勢な食べ物と酒を呑みながら自分の詩を発表して意見を交わし推敲してもらったりしたりしている
大抵の詩人はドワーフだ 美しい人間の女性の詩人もいる 男の詩人は長髪が多い 半獣人もいる 動物達も思考を燻らせて詩作を練っている 土 水 火 木の精霊達はその様子をぺちゃくちゃ喋って笑いながら自分達も精を出している
お題は自然の中に無限にある 誰も喧嘩することなく時間が経つのも忘れて詩を作っている
南中した太陽の光は森の中にちょうど良く差し込んでぽかぽかして気持ちが良い
季節は春だったが夏のように虫の音がうるさい
草や木達も詠いあっこしてている 早く梅雨の季節が来るようにっていうお題で
夜が深まるにつれて祭は盛り上がりを見せてくる
相当にできあがっている詩人達が大きな切り株のテーブルの上でどんちゃん騒ぎを起こしている
精霊達はその様子を見ながら頬に手を当てて嫌な顔をしている
中には裸になって詩を詠っている者もいるのだ
夜の気配が鋭くなってきている この祭を好ましく思わない者もいるのだ
その気配を誰よりも真っ先に感じ最も受けるのはまぎれもなくここいらにいる詩人達だ
だが彼らはそんなことを気にもせずに踊りに明け暮れている
みんなそれぞれに楽しい思いをしている
広場の中心には巨大なキャンプファイヤーが組まれ激しく燃え盛っている
満月はその煙にむせてゴホゴホと大きな咳をしている
祭もいよいよクライマックスだ
それぞれが祭で作った詩や持ち寄った詩の中でもっとも優れた詩を発表した
全員がその詩を大合唱した
祭は夜更けと共に静かに幕を閉じた