手と手
海月

西の空が赤く染まる
夕暮れ時
君の手が僕の手から離れた
スルリと零れ落ち
手を伸ばした先にいたのは
数年後の自分自身の手
ゴツゴツと荒れていて
爪は黄色く変色をして
指は今よりも太くなり
何かに絶望を感じた
希望と現実の狭間は
妥協と協調の繰り返し
順番をただ待ち続ける
後ろの人が急かすから
自分の番を譲る馬鹿がいる
何の為に並んでいるのですか?
丁寧語と謙譲語で相手を敬い
自分を常に下と意識する
回路を見出せずに
輪廻の中を回り続ける
生まれ変わりを信じて
死んでしまっても
又、君と恋に落ちたい
淡い幻想と想像
世界は常に歪みを繰り返す
全てをいい方向へと倒そうとする
その為にバランスを崩して
違う方へと倒れる
君の手を一億から探し出す
玩具の人形は瞬きをせずに
僕を睨み付けている
髪を梳かせ

僕を睨み付ける
手入れをしていない髪はボロボロで
クシが通らず絡まり合う
朝顔の蔓の様に複雑に絡まり
自然と枯れるのを待つ
種を手に入れる為に闇になるのを待った
西の空は闇に染まった
月明かりの下
僕の手は青白く光っていた
右手を差し伸ばしても
君の手は握り返してくれない


自由詩 手と手 Copyright 海月 2007-03-13 00:34:51
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