ひとつ みつめる
木立 悟
遅い流れにひたされる街
今日も鏡は隠されてゆく
たましいのないもののふるえを聴く
たましいではないものに包まれたたましい
蜻蛉や蜉蝣
碧い石の眼
空を分け
空に埋もれる
川の底に
つもる鏡
鏡だけを見て
沈む鏡
壁のぼる葉は
羽のかたち
すぎる鳥の
緑の影
曇が去り 風が去っても
まだらな光のまだらのなかを
水音はずっと水音のまま
踊るように歩みつづける
ふるえるもののあかしとしるし
流れと底のはざまのたましい
雪は葉の高さでうたへと変わり
鏡のない街を梳いてゆく
自由詩
ひとつ みつめる
Copyright
木立 悟
2007-03-12 23:00:56