きゃらめる 9
アンテ


                       きゃらめる 9


  うた

  1

きれいなこえを
ひろったので
はねをつけて
そらにはなちました
らら
きれいなこえで
さえずりながら
らら
おかのむこうへ
みえなくなりました


  2

あぱーとの
おくじょうにのぼると
ぴーぷー
かぜがまっていた
てすりにもたれて
めをとじて
すきなうたを
ゆっくりゆっくり
くちずさんだ
さいごまで
ぶじおわると
ぱちぱち
はくしゅがきこえて
めをあけても
だれもいなかった
ぴーぷー
かぜがまっていた


  3

こどものころに
よくかよった
だがしやさんにはいってみた
たなのおかしを
じゅんばんにながめていると
あのころとおなじばしょに
うたのかみさまがいた
くすんだあかちゃいろの
ざぶとんにちょこんとすわって
やーやーよくきましたな
とうきのかおの
とうきのひげがゆらゆらゆれていた
いわれるままに
くちをおおきくあけると
うたのかみさまは
のどのおくをてんけんして
けっこうけっこう
なんどもうなずいた
「ら」と「み」を
しゅうりしておきましたぞ
ためしにこごえでうたうと
いいかんじだった
みせばんのおばさんが
せきばらいしたので
おれいもそこそこに
ぴーぴーらむねをひとつかって
みせをでた
すきっぷをしてかえった


  4

とつぜんの
ゆきがふりやんだ
あすふぁるとにひがさして
しろいじょうきが
ゆらゆら
ゆれていた
うんどうぐつのおやこが
かるがると
さかみちをのぼっていった
てっきょうを
きしゃがわたっていった
わたしには
なにができるだろう
どてにのぼって
おおきくいきをすいこんだ


  5

まよなかに
でんわがなった
もしもし
よんでみても
ざつおんがひどくて
ほとんどなにもきこえなかった
じゅわきをおいて
ふりかえると
こぼれおちたおとが
ゆかのあちこちで
ひそひそささやきあっていた
びんにひろいあつめて
みみをよせると
どこかなつかしくて
でもいったいどこできいたのだろう
ねむれずに
つぎのでんわをまつうち
とりのこえがあさをつれてきた
おちゃをいれて
すぷーんでおとをひとすくいして
きょうはなにをしよう
ゆっくりとのんだ


  6

まぶしいあさ
まどを
ぜんかいにして
せのびをして
からだじゅうに
くうきをじゅうてんする
きょう
いちにちだけは
なにがなんでも
うまくいきますように
おんぞんしていた
とっておきのうたを
くちずさむ


  7

おなじことばが
なんどもくりかえされていて
わたしのことを
なんでもしっているように
ときあかすくせ
きもちをことばでしょりしてしまう
きみょうなてがみ
をもらった
なんども
よみかえすうち
はたときづいた
あなたがいつだったか
わたしにぴったりだといって
くちずさんでいた
うただった


  8

ざわざわ
しゃべっていた
じょうきゃく
ぜんいんが
ぐうぜん
どうじに
おなじことばをいった
がくえんさいの
がっしょうだんみたいで
おかしくって
おもわずふきだしたら
はずかしそうなめせんの
しゅうちゅうこうげきにあった
ちょっと
うらやましかった


  9

かなしいきもち
ららる
くちずさむ
うれしいきもち
ららる
くちずさむ
なんにもかんじない
ときは
たいくつしのぎに
ららる
くちずさむ
なんとか
いきている


  10

ぴんぽんぱんぽーん
とつぜん
こうないほうそうがながれた
ただいまから
がっしょうをおこないます
みんなせきをたって
ちょくりつふどうになって
きいたこともないことばで
うたいはじめた
とてもなつかしくて
でもいみはちっともわからなくて
おろおろしているうち
しゅくしゅくと
ななばんまですすんで
おんがくがやんだ
みんなせきにすわって
もとどおり
しけんもんだいをときはじめた
かりかり かり
えんみつのそくどが
はやくなったきがして
あせがぽたぽたながれおちた





自由詩 きゃらめる 9 Copyright アンテ 2004-04-21 01:45:06
notebook Home 戻る
この文書は以下の文書グループに登録されています。
きゃらめる