絵てがみ
weed & sky

久しぶりにおばあちゃんに絵てがみを出す。
庭から取ってきたホトケノザ。
よくある絵てがみみたいに葉書いっぱいに描くというのは、
なぜだかどうも私にはできない。
一般的にいうとやや遠慮がちな、
でも私にしては精一杯大きなホトケノザを、
もちろん下書きなしに、でもちょっとずるいかもしらん筆ペンで、
線一本一本、精神を集中して描く。
うっかりして老眼鏡を置いてきてしまった。
老眼鏡はマンションの隣の部屋にあるので、
取りに行くにはいったんこちらの玄関のドアから出て鍵をかけ、
向かい合ったドアの鍵をあけて入らねばならない。
面倒だし集中力が途切れてしまいそうだし、
そのまんま目を細めながら描いていく。
私の作業台は北向きの部屋にあるので暗くなるのが早い。
暗くなるとますます目は見えにくくなる。
それでもどうにか色をつけ下手くそな字で「小さいけど春」と書いた。
絵を描くといつもひどくおなかがすく。
おばあちゃんは大阪にいて1人でケアハウスに住んでいる。
近くに娘や息子は住んでいるのだが、
1人暮らしがしてみたいとか言ってケアハウスに入居したらしい。
前は毎週くらい絵てがみを送っていたのだが、
最近は自分のことが忙しく、たまに手紙を出すくらいになっていた。
50を過ぎて人生も残り少なくなった気がして、
いろいろ新しいことをしてみたくなったからだ。
でも、おばあちゃんの時間は私よりずっと残り少ないのだよね。
楽しいことは1つでも多い方がいいに決まっているよね。
自分の郵便受けを見に行ってきれいな絵てがみが届いていたら、
おばあちゃんはその日1日くらいは楽しいかもしれない。
父方のおばあちゃんはもう亡くなってしまっていて、
実家に帰るとお線香をあげて挨拶はするけど、
亡くなる前にもっと何かしてあげられたかもしれない。
夕方、描きあげた絵てがみをポストに入れた。
小さな赤い郵便車が走ってきてポストの前に止まった。
おばあちゃん、予定より早く届きそうだよ。




未詩・独白 絵てがみ Copyright weed & sky 2007-03-11 13:16:50
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