処方箋
塔野夏子

白くつめたい指が摘んだ菫の花束
破綻をつづけるイノセンス
誰にもわからない時を刻む時計
虹色に震えながら遊離してゆく旋律
救いの無いシナリオ
かすかに聴こえる古いオルゴール
のようなノスタルジー
の消失
青白い光を含んだ化石群
華奢な感傷
硝子製の鍵
明かされる日の決して来ない秘密
を持っていると夢想すること
銀のプレートに刻まれたいくつかの素数
その中で影だけが廻る万華鏡
窓の遠くの緑の丘とその上の塔
気怠く長い午後の上質な退屈
不意の接吻
の記憶






自由詩 処方箋 Copyright 塔野夏子 2007-03-11 12:28:52
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