モンスター
智鶴

その時何を考えていたかは
とうの昔に忘れてしまったが
其処から見ていた景色が
哀しい程美しかったことだけは覚えている

閉じかける目を
何度も何度も抉じ開けて
恐らく
君は何かを伝えたかったんだろう
哀れむような目で
僕を見ていた

万物に意味が有る訳ではないが
傷つけ合い
殺し合うことには意味が有ると
少なくとも信じることだけは

瞳の中にモンスターが見える
欲望と憎しみを喰って
哀しみを生み出すモンスター
僕の中の成長し過ぎたモンスターは
僕を喰い殺して
他の宿主を探している

世界に蔓延るモンスターが
巻き起こす争い
もう意味が有るなどと信じられない
絶壁から見える景色は
憎しみの火と嘆きの赤で
哀しい程美しかった


自由詩 モンスター Copyright 智鶴 2007-03-11 00:00:39
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