ぐるぐう
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あの暖かい日
お前が何をして過ごしたのかわかる
なぜその足あとが
ところどころ途切れていたのかも
今ならよくわかる
廊下から部屋へ曲がるあたり
眺めて拭く気になれなかった

魚がコンクリートに弾んでいれば
珍しさのあまりおどけているのか
ぷつぷつといって
首をゆらすながい髭
小さな寝顔が臭くて
黒くてやわらかい
肋骨のうき出した

ぐるぐう
もっと飛んだり
跳ねたりあくびして
逃げまわるくらいなら
とっとと出ていってくれたっていいんだ
ぐるぐうはじっとしていない肖像で
俺がねむったふりするころ帰ってくると
ちいさなしんぞうが
すこしづつゆっくりとして
重なりそうな足元にくる
胸、目ざめるふりすれば
試験場までの無限軌道
しっぽに風の旅宣言
けれどテレピンの瓶をゆらす仕草は
北向きからの光が反射していて
お前はそのまま
魅せられていていいんだ

扉はいつだって開いているんだ
俺には立派なすき間
お前にはじゅうぶんすぎる門
この部屋がどうにも気にいらない
お前の母親だって
ツナ缶のお礼と言って
もぐらをもってきただろ
もぐらは鮪なんかより
ずっと名誉で貴重なものだ
そう、ひたいいっぱいに書かれてあった
バイラークのタッチがお気に入りなのは
俺だっておなじさ

カーテンよじのぼった瞳は破けに
鈴鹿のみねを越える雲をじっと見つめて
マッチ擦ったようなくしゃみ
きいろい糸くず
動けなくなって
きっと今でもにおってぶらぶら
よっぱらいのはだかの尻に
かみついたら放られた
おならしながらぐるぐう
おしっこしながら壁に
ぶつかってぐるぐう
ふしぎな声でなきやがる
そのくせずっとだまっていたい
そんな感じのなみだを
みせるあくびして
つめたかったろうな
散らばった毛をあつめながら
つぎはお前がうまれる前から
そばにいたいと願う

ここはお前の家だから
ひとことの遠慮もいらないんだ
お前がみつけて
たまたま俺がいただけの場所
とっくに地震で傾いて
誰も住めなくなったから
仕事帰りに眺めてる
変ななきごえと
おしっこでできた墓標
映す貯池で出会ったのは
釣糸が垂れる波紋をみつけて
その奥が気になって
しかたなかった
そんな顔してついてきて
一緒にくらした
ぐるぐう
すこしのあいだ
並んであるこう
いまも変わらない丘の波を
クレーの夕日を
おいかけたり
ふりかえったりして






自由詩 ぐるぐう Copyright soft_machine 2007-03-10 07:22:49
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