思い出話
霜天

まるで隠れるような三月
全てを終わらせた昨日から
跳ねるように帰宅する君たち
その隣の景色が輪になっていく
循環する道程を真っ直ぐだと
いつまでも信じているものだから

中空に飛ぶ鳥の
数を数えたこともある
青空や花、足音、触れ合う呼吸、囁き声
いつかのそれらに、染み渡っている音
川原の石に耳を当てれば
今もさざめきは聞こえるだろうか

分かれ道
遠い十字路
別れあう声が聞こえる
あちらこちら
挨拶の隙間
誰もいない昼の街並み
君の脚だけが駆け抜けていく


語る景色は変われないまま
いつも真昼の空に溶けた
今日も区切りの鐘が聞こえる
そして今も君たちは門から街を、抜け出して
脚と声だけで駆けていく


自由詩 思い出話 Copyright 霜天 2007-03-10 01:33:30
notebook Home 戻る