88、手探り 【てさぐり】
雨宮 之人
初めに知ったのは母親の体温だった
温かな羊水に浮かんでいた記憶はないけれど
むすんで、ひらいて、して
あれからいくつの温度が僕を通り過ぎたのだろう
居心地の良い夢を見て
蝶々を追いかけて
指来たす、この空の下で
指さえも触れない未来へと
愛しさの手触りを
むすんで、ひらいて、そしていつかの僕は
直径5メートルから、這い出してみせたんだ
暗い宇宙にぷかぷかと浮かんで
差し出しているこの手に、そっと
触れる、あぁ、太陽が触れる
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