僕の隣にいる腐った君
はじめ

 腐乱した君が僕の横で死んでいる
部屋は密封されていて匂いがひどい
 冬なのに蠅が飛び交い 体中から蛆虫が湧き出ている
 暖房が効いているせいか
 床には睡眠導入剤の瓶が大量に散らばっていた
 一体どこでこんなに買ったのかと思った
 部屋は汚かった
 もう三日も飲まず食わずで不眠だ
 薄いカーテンから漏れる光が部屋を照らす
 ベッドに背をもたせかけている
 僕は君の左手と手を握った
 ぶらんぶらんしたり二の腕を震わせたりした
 けど君の表情に何の変化も無かった
 眠っているように死んでいる
 この「君」は本当の「君」じゃない
 僕は絶望のうちに死んでいくのかもしれない
「君」に会えないまま
 誤解されたまま
 嫌われたまま
 少し眠りたい
 転がっていた睡眠導入剤を数粒口に放り込む
 ベッドに頭を沈める
 腐乱した匂いが少しだけ気持ちの良い匂いになった
 時計は止まったまま
 日の光だけが僕の嗅覚を刺激した
 とろとろと微睡みに落ちていった


自由詩 僕の隣にいる腐った君 Copyright はじめ 2007-03-09 17:56:21
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