白く、粥、の、
新谷みふゆ

白く、 粥、 の、
溢れた鍋、 に、
朝の、 音楽が、 生まれ、
あたしが言葉と言葉とを繋ぎあわせられるようになる頃
脚を折ったかあさんの不器用な足音が
台所で今日をかつかつと叩く
たくあんはこの世界の光と光と・・・
全ての光を集めたような真っきいろを食卓に運んでいた


湯気は
朝の眠気も 煩わしさも
慣れない未知の時間へのわだかまりも
少しづつ天井へと持っていってしまう
おはようと言えない日の方が圧倒的に多いのに
かあさんはきれいに箸を揃えて座卓に置くので
あたしは朝御飯は食べられないとは言えなくなってしまう


熱い粥に口の中火傷したところを舌でさわると
膨れあがった皮膚はまだ滑らかで
あたしは泣くには至らない
そんなことで朝は何もかも許してしまいそうになる
それがどれほど危ういことか知りながら
あと一歩のところまで近付いてしまう


殺人は純粋な行為だと書いてある本のことなんて
かあさんは知らない
純粋なのはセックスだけとか
赤ん坊だけとか 欲望だけとか
言う人たちのことなんて朝は知らない


なかなか冷めていかない粥の中で
忘れていかない声が湧きあがる
・・・コロシタイカラコロスンダロ?


在り方も持てないような純粋なんて
きっとただの壊れ物に過ぎない
・・・コノコタチハマモリタイアイラブユ
かあさんが決して耳に入れないような歌は
既に彼女の中に存在している
それで朝が壊れるほど埋め尽くされたならいいのに


テレビは観たく、 ない。
朝から、。 少し、 づつ、。
違う、。 もので、。 壊れていく、。 今日を、。
だから、。 あたしは、。
白く、。 熱い、。 粥、。 に、。
投げ入れ、 た、 かった、。
・・・、。


自由詩 白く、粥、の、 Copyright 新谷みふゆ 2007-03-09 09:41:24
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