前進<18のprose-10->
ウデラコウ
バランスをなくした 積み木はまた崩れて
四方に散らばった欠片を 僕はゆっくりと拾い集める
カタカタと無言で 最初から積み直す僕に
ベッドの上から 時期はずれのミッキーマウスが声をかけた
そんなことしても また崩れるよ だって 土台がボロボロだ
何さそんな 大人の匂いを振りまいて
君は世界中の子供達をあやすのが 仕事だろう
悪態をつく僕に 無言で彼は立ち上がると
主の僕にことわりもなしに その積み木を蹴飛ばした
認めろよ 腐ってるんだ 土台が
そんな上に キレイを飾っても 意味なんかない
小さなネズミのコトバに 僕は初めて積み木の下を覗き込む
そこには 僕が誰にも見せずに 吐き捨てたものが詰まっていた
黒くて ドロドロで 奥行きさえ掴めないような
終わりのない闇
そうだ 見て見ぬふりをして 積み上げてた
君が キレイだねって 誉めてくれるのが 嬉しくて
高く 高く どこまでも
遠くにいる君にも すぐにわかるように
僕はもう一度 散らばった積み木を集めなおす
時期はずれのミッキーマウスはそれを黙って見つめる
全部集め終わった後
君が忘れた 青いライターを取り出して
静かに火をつける
やり直しじゃない 先へ進むんだ
独り言のような そのコトバに
世界一有名なネズミは 何よりも大きく頷く
僕はその様に そっと微笑むと ライターごと静かに闇の中へ投げた
瞬く間に 火は回り 僕の前には鮮やかな朱の柱が立つ
その朱を見つめながら 僕は
君に新しいライターを買ってあげることだけを 考えていた
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