マシュマロの首飾
soft_machine


青いひかりテーブルでぽつり
グラスのふちに残された
口紅をぬぐうと砂糖の甘さ
部屋のすみずみで
とけ切らずゆれていた
おまえの唇に映る模様
グラスの底の乾き

俺はいつも眠たくて
おまえが帰ってくるまで起きて
いようと考えているだけ
朝日の底まで
独りぼっちの部屋で
枯れてゆくだけの草花に
水を撒いたり
ベランダで
横たわった戸棚に腰かけ
銀杏の鴉が羽ばたく
瞬間を見逃したくない
だけ

枯れた花束でいいから
そう言っておまえ
チェックのスカートがよく似合ってた
呼吸はいつもちいさくて
透ける肌
俺の前では
いちども食事しなかった
ほこりひとつ残さず
ヘミングウェイは読みさしたまま
乾いた歌で
いったいいつまで

ま黒い影の上で
生きていられるの
わたしは違って
お酒もない
たばこもない
あくびはするけど
眠るなんて
ドラム叩かせて
こころの変わりに
刻んでいれば
なにかが美味しいって思えたら

そんなわらい声で消える
さびしかった初恋の代わりだと
言って窓硝子
母親になると
言ってハイヒール
背伸びした
背中にすこしたてがみがあって
かみさまでもいい欲しい
つぶやいた
おまえは化粧をほどこされ
どかへいった
見ひらいたままの瞳
そして閉じられ
黒髪をいくつか握られ
胸には指をくみ合わせている

俺はいつも眠たくて
おまえが帰ってくるまで起きて
いようと考えているだけだった
変わらない歌
いったい、いつまで
おまえはグラスを逆さに伏せると
マシュマロの首飾が欲しい
そう言って頷いて
あくびして
くしゃみした




自由詩 マシュマロの首飾 Copyright soft_machine 2007-03-08 06:10:46
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