コーンに生まれて
ブルース瀬戸内

コーンに生まれてごめんなさいと、
すっかりポップになったトウモロコシが言うので、
何も謝ることはない。私は君がコーンに生まれて良かったと思っている。
いや良かったとすら思っていると伝えると、

コーンに生まれてごめんなさいと、
とんがったお菓子になったトウモロコシまで言うので、
そんなことはないんだ、コーンであることに自信を持ちなさい。
君は遺伝子組み換えなわけでもない天然すぎるコーンであって、
そのことは誇っていいことなのだよ。
誰が君ほど太陽を浴びていると思う?と伝えると、

コーンに生まれてごめんなさいと、
しょうゆ風味の焼きトウモロコシまで言ってくるので、
いいかい、君たちは僕たちだけでなく家畜まで楽しませてくれて、
その家畜は僕たちを楽しませてくれる、
つまるところ全部、君たちが楽しませてくれているんだよと伝えると、

コーンに生まれてごめんなさいと、
ポタージュ仕立てのトウモロコシまで泣き出すので、
待ちなさい、君たちの温もりと美味で
どれだけの人が失恋を忘れることができたことか、
私は感謝してもしきれないんだよ。
泣きたいのはむしろ私だよ、と伝えたところで
家中のコーンを食べつくしてしまった。
この場合、歯の間の生存者はカウントしていない。
ともかく食べすぎた。

よって私はここ一週間体重計に乗るのを避けている。
見るのも勘弁である。
明日あたり体重計が謝ってくるかもしれない。


自由詩 コーンに生まれて Copyright ブルース瀬戸内 2007-03-08 00:25:37
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