だぁれだ?
恋月 ぴの
背後から抱きしめられる気配が
して
「だぁれだ?」
そんなのあなたに決まっているのに
他のだれかを想像してみる
雪の降らなかった今年の冬を
ひとりで歩いてみた
行き先なんか
決めたりしないで
たとえ束の間であっても
静かに降り積もる白さ
さえ
あれば
覆い隠せたこころの傷
なのに
癒せないのは判っているよ
それでも
あなたの存在に
すねてしまう。わたしがいて
春はすぐそこまでやって来たのに
今しばらくは
北の風に吹かれていたい
満たされようも無い物足りなさと
刹那さと
「だぁれだ?」
そんなあなたの優しさに
「ごめんね」だなんて
両掌で包んだカップにつぶやく