暁の巡礼
モーヌ。



曇った 庭の かたすみ に

そんな 便りが ある

二季を 過ぎて きた 冬の 朝顔が

ア・カペラを 一輪 ふるえて

白さに ひらかれた 暗さの 土地で

無伴奏( のために... )を 置弦し

静止画 が もつれて ゆくのを 指で 追う

立てられた 軽音を からからと たどって

たぐり 寄せ 反射する 純情を はじく

花に ほてって 青ざめた その 朝の 和音を





伸び あがる カオスの 3声を 薫って

陽を 待ちながら 割れた 指先と

打ち水を 陽光に 染めた 手を 持って

あかね雲の 厚い 白夜に 似た 低空に

明けの 鶺鴒せきれいを 飛ばせ

白の まざった 灰の すがたを たどる...

つばさは みなもを 割って 流れる水を

かがみの 空へ 文字と 散って

かれらが 描いた 道の 降る 水珠の 一瞬を

フレットの 上に トレース して

ひとつの 朝焼けを ひそかな 軽風を

蒼穹の アリアを...

ちがう 音たちに ゆれて ゆく

音階は おなじ だけれども

おなじ ひびきたちが する

オクターブは 違えども





捨てられ 忘れられた 花影の 蔦から

翳で あった ふるさとに 触れる

ひかりの 閉塞を 通って こなければ

減ぜられて からで なければ 現れない

語らないものたちの 語らい...

それに 沿って ゆきたくって

12弦を 流れる ストリングスを

弦には とどかない 思いの まま

雲を 打ち払い ながら 弾いて 語る

また いくえにも 強弱して 織り なされた

ひかりの 厚みを 感じる 織物に 巻かれて...

おまえの フィールドを よぎって

霧の なかの 戦場を 生きて 鳴った

晴れた日 という 虚空へ

朝へ と 変わった いまの 花は

冬の なかから その 色を ひびき

唄を ひらいて 生まれて ゆく

聞こえる 音夢ねむの うしろすがたは 終わらず

弦の ふるえを 走って ゆく

雲の 記憶の ままに 降り かかり

残された 雪粒は ほほを かすめて 過ぎて ゆき

青から 赤へ ほっ と ほてって 呼び ながら

つぶって いた まぶたを 飛んだ











自由詩 暁の巡礼 Copyright モーヌ。 2007-03-07 12:46:55
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