巣鴨行進曲
恋月 ぴの

ああ。やっぱしね
唐組のエンディングって
こうじゃなくっちゃ
唐組第38回公演「透明人間」千秋楽
ぽっかりと開いた夜の闇に
石灯籠の怪しい灯火
唐さんのおはこだよね
花園神社でも鬼子母神でも何でもこい
ってか
座布団忘れたのは誰だっけ?
腰の痛みをこらえ
君と僕
ちんちんちん。発車進行
都電荒川線は
倒れかかる家並みを掻き分けるように
鬼子母神前から
庚申塚へ
上弦の月だなんて
早仕舞いのシャッターの影から
こちらを窺う三毛猫の瞳が眩く光る
ここは巣鴨地蔵通り
くそばばあどもの原宿
ってか

くそばばあが
「この。死にぞこないめ!」と罵られても
嬉々としている街

巣鴨地蔵通り

ついさっきまで杖にしがみつき
息も絶え絶えだったくそばばあどもが
土産物袋を両手に闊歩する街

旧中山道街道筋に「とげ抜き地蔵」あり

言葉の端々にトゲがあるって言われている
そこの貴女にも
若気の至りってやつがこころに刺さっている
そちらの貴方にも
ご利益あらたか「とげ抜き地蔵」

草木も寝静まったはずの境内から
女学生のような華やぐ声がする
やっぱし。きよしよね
きよしにならあげちゃうかも
なんとも奇妙な声のする。その先を見つめてみれば
そこには
揃いの五本指赤靴下
赤ババシャツにセーラー服を着た
死にそこない

死んじまった。くそばばあどもが
干からびた唇に真っ赤な口紅まで塗りたくって
口元に右手を当てたりなんして
けらけら笑っている

くそばばあ
歯抜けばばあ
砂かけばばあ

なんてことだろう。ばばあの執念は肉体の限界をも凌駕して
MJのスリラーならぬ
きよしの
ずんずんずん
ずんどこ


これって唐さんの演出ってわけ?

じいさん死んでも
ただのゴミ

ばあさん死んだら
ただじゃぁすまない

やだなぁ。スカートぱたぱたあおぐなよ

その凄まじい執念は人魂と化し
チッソ・リン酸・カリ
あの頃は
はぁ?
ロンスカ。カーリーヘアに眉無しおでこ

ナウいじゃん
関心する君に向って
スケバン刑事のヨーヨーがみまう
ばばあ。なにするだよ!

四代目スケバン刑事って

五本指の赤靴下なら巣鴨のマルジへ

赤靴下
レッドソックス
あの二重あご。気になるんですけど

無数の死んじまった。くそばばあども
とげ抜き地蔵の境内に溢れかえって
股ぐらなんか掻きむしって

ずんずんずん
ずんどこ

きよし!




自由詩 巣鴨行進曲 Copyright 恋月 ぴの 2007-03-05 22:53:02
notebook Home